ROCK'IN ON JAPANという雑誌の感想

VOL.353の感想になります。表紙はRIP SLYMEPerfumeインタビュー目当てで買った奴です。いまごろこんな感想をエントリーするのは、件のエントリーが思いのほかアクセスがあったためです。
この話題に関心がある人は、このエントリーは、ベクトルとしては航空力学氏とはあきらかに違うので、一次資料にあたり、自分の意見を持っていただきたいです。

全体をさらっと読んだ後、椎名林檎木村カエラPerfumeのインタビュー記事と特集のRIP SLYMEを読んでますが、ロック(音楽)を人間精神活動を映す鏡としてだけではなく、音楽が精神に与える影響があるという前提で、創作活動(おもにアルバム制作)に於ける、挫折、葛藤、そして克服といった精神活動に焦点を当てたインタビューを行っていました。
木村カエラはもっともこのパターンにハマっていて、素直に苦労したことと、苦労の中身、悩みなど、どう克服して完成したのかという内容でした。
椎名林檎の場合、ハナから斜に構えていて、P66-P67では

●なるほど、でも、そういう手段を使ってまでしても「加爾基」というアルバムを出したい必然って何だったんですか?
椎「うーん・・・それはロックファンとおっしゃる、音楽というより人のことに興味がある人--誤解を恐れずに申し上げると、ゴシップ的なストーリーが好きな人がお客さんの中にある割合でいらっしゃるのを知って。その方々への『そういうのはもうこれで最後にさせてもらいます』って言う意思表示だったんじゃないかと思うんですよね。(後略)」

と、ロックファンを音楽より人に興味がある人と皮肉っている。とはいったもの、インタビュアーとは話がかみ合っている。
Perfumeの場合、まずライヴが半年ぶりという所から入り、内面の葛藤を引き出している。そして、ツアーの話になり、Perfumeメンバーは代々木の反省やら今回のツアーの抱負やら盛りだくさん語る。ところが、インタビュアーは自らライヴの話を振りながら、

●「アルバムのことも聞きたいんですけど。」
あ「あ、そっか」
の「そうかって(笑)」
●「(笑)かなり尖った、歌もの要素が少ないダンス・アルバムになってますよね。3人の声もかなりエフェクトがかかって判別できないぐらいの所もありますが、それについてはどう思いますか?」
あ「ああ、でも誰でもいいんですよ」
か「それすごい分かる!」
あ「声誰がとかある?」
か「あんま気にしなくなった」
の「Perfumeであればって感じだよね」

ということで、判別出来ようが出来まいが、歌い分けには拘らないということで、もう、そういう葛藤は無いと。
例の場所も。

あ「でも"Speed of Sound"みたいな奴ばっかりになってくのもどうかと思いますね」
の「ライヴどうしようってなるね」
あ「しかもPefumeが歌う意味あるのかなって。capsuleさんはそれでいいじゃないですか。(略)。でもPerfumeはそうじゃないから、そればっかりになっていくのは怖いけど。ほんとに素材としてしか考えられてないっていうのは。でもそうじゃないと信じているから、ここまでいっても任せられるし、オッケーって思える。あと、3人の声が重なるとPefumeなんですよね。だし、めっちゃいいと思わない? 3人の声が重なってるとこって」
かの「うん」

あ〜ちゃん曰く(中田氏にとって)Perfumecapsuleとは違うと信じている。だから、ここまでやってもオッケーって思えるということで、"Speed of Sound"みたいな奴ばっかりにならんでしょ。って訳。ということで、新しいアルバムに対する葛藤は検出できず。
しかたないので、インタビュアーは過去へ。最新アルバムの話を振っておいてこの展開は無茶振りだろう。

●例えば、昔のアイドルっぽいかわいい曲を求めるファンがいるとしたら、それについてはどうですか?
か「今のPerfumeを受け取ってください。(中略)中田さんが出そうとするならあってもいいと思うけど、そのかわいらしさは、ハタチの今のPerfumeのかわいらしさであって、昔のかわいらしさを求められても、それは今新しく出すことは難しいと思います」
の「そうだそうだ!」
あ「(変な声で)そうだそうだ!」
か「昔の曲をやるときに、昔のかわいさに戻ることは出来ると思うんですよ。(略)ただ、今から新しく出す曲にそのかわいさを出せって言われるのはちょっと違うと思う。受け止めてください、私たちももうハタチなんですっていう」
の「寂しい(笑)」
あ「好き嫌いがあるのはもちろんあると思いますし、だから離れてってる人もいっぱいいると思います。でも、増えていってくれてる人もたくさんいるし、それがいいって言ってくれる人もいっぱいいるから、全然なにも思わないですね」

これはインタビュアーはミスしていると思う。インタビュアーは、Perfumeにとって、昔のアイドルっぽい曲といったら何を連想するか分からなかったのだろうか。いまから「おまじない☆ペロリ」っぽい曲を求めるファンには、「今のPerfumeを受け止めてください。私たちももうハタチなんです」としいいようがない。
葛藤させるなら、『「近未来路線」を求めるファンがいますが、そういうファンにはどうしますか? 』とかでしょうね。それが分からないスキルのインタビュアーなら、無能としか言いようが無い。まさか、予備知識なしでのインタビューとか無謀なことをしたのだろうか。
あ〜ちゃんも「全然なにも思わないですね」というのは文字列的に印象が強烈なので、もうすこし前提条件を付けた方が良かったと思う。ただ、この文脈全体を引用すればそりゃそうだろと。インディーズのころに戻れというのは酷すぎるし、そんなファンが離れていっても何とも思わないだろう。
とりあえず、昔のファンを切り捨てて今の自分たちを見て欲しいという話に受け取ったのか、インタビュアーは仮定の話(昔のアイドルっぽいかわいい曲を求めるファンがいるとしたら)から、大胆にも、ツアーは新しいPerfumeの位置づけを期待したようだ。

●こういうアルバムだとさらに、Perfumeとはっていうところを見せていくツアーになるんだと思いますが。
か「あまりショウになりすぎないようにしたいですね」
あ「だって、音楽を聴きたいならCDで聴けばいいから、そういうふうにに思ってもらいたくないから、あんなMCがあるし、演出だっていろいろやりたいし。だから、ライヴに来てよかった!って思ってもらいたいので、ライヴしたいですね。いやあ、幸せだと思います!」
の「言うと思ってた(笑)」

なにが「こういうアルバム」なのか不明だが、それを除いても、最後まで噛み合ないという。ただ、ある意味では噛み合っているとも言える。アルバムの内容とは違った次元でPerfumePerfumeのライヴを作るんだということ。
それはそうだ。ライヴはPerfumeのセルフプロデュースだからだ。ライヴタイトルからセットリストから果ては、グッズさえ彼女たちが主体となって決めていくのだ。だから、Perfumeとはっていわれると、演出面になるのだ。
この辺りにもインタビュアーの浅さが感じられた。

新アルバム制作にまつわる話という今回のテーマなら、サウンドプロデューサーの中田ヤスタカ氏にすべきだ。Perfumeの活動のコアはライヴなのだ。おお、これはこれでロックだ。いつからロックはアルバム制作が活動の焦点になったのだろうか。なんか昔はロックと言えばライヴだった気が。やっぱりスタジオに籠ってしまってからロックは死んだんだろうな。